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文献概要
特集 職場の精神保健 現代の職場の抱える精神医学的問題
精神科クリニックにおける職場のメンタルヘルス活動への取組み
著者: 楢林理一郎1 三輪健一12
所属機関: 1湖南クリニック 2湖南病院
ページ範囲:P.1063 - P.1068
文献購入ページに移動はじめに
職場におけるメンタルヘルスのテーマが社会的に関心を集めるようになってきたのは,筆者の記憶では,およそ1980年代の前半からではなかったかと思われる。もちろん,戦後早い時期から先駆的な精神科医によってこのテーマは研究,実践されてはいた3)ものの,社会的な認識は決して高くはなかった。しかも,1970年代には,精神科医の間からも,産業精神保健が企業の合理化の論理のもとに職員の排除に利用される恐れがあるのではないかとの批判がなされ,しばらくの問,企業における精神保健のはらむ危険な側面のみが強調され,真摯に取り組む者が沈黙を強いられる時代もあった4)。
1980年代に入り,エリートサラリーマンの相次ぐ自殺がマスコミの話題となったり,とりわけ1982年の日航機の羽田沖墜落事故において,機長が精神障害で判断能力を欠いていたことが報道されるなどの一連の動きの中で,企業における職員の精神的健康管理の問題がようやく一般の注目を集めることとなった。また,自殺企図とその結果の障害を残したうつ病の技師の事例に対し,1984年に初めてのうつ病の労災認定がなされたこともこの時代のひとつの特徴的な動きであったといえよう。しかし,このような状況も長くは続かず,ごく一部の企業を除いて,関心は次第に下火となった。
職場におけるメンタルヘルスのテーマが社会的に関心を集めるようになってきたのは,筆者の記憶では,およそ1980年代の前半からではなかったかと思われる。もちろん,戦後早い時期から先駆的な精神科医によってこのテーマは研究,実践されてはいた3)ものの,社会的な認識は決して高くはなかった。しかも,1970年代には,精神科医の間からも,産業精神保健が企業の合理化の論理のもとに職員の排除に利用される恐れがあるのではないかとの批判がなされ,しばらくの問,企業における精神保健のはらむ危険な側面のみが強調され,真摯に取り組む者が沈黙を強いられる時代もあった4)。
1980年代に入り,エリートサラリーマンの相次ぐ自殺がマスコミの話題となったり,とりわけ1982年の日航機の羽田沖墜落事故において,機長が精神障害で判断能力を欠いていたことが報道されるなどの一連の動きの中で,企業における職員の精神的健康管理の問題がようやく一般の注目を集めることとなった。また,自殺企図とその結果の障害を残したうつ病の技師の事例に対し,1984年に初めてのうつ病の労災認定がなされたこともこの時代のひとつの特徴的な動きであったといえよう。しかし,このような状況も長くは続かず,ごく一部の企業を除いて,関心は次第に下火となった。
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