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文献詳細

雑誌文献

精神医学42巻2号

2000年02月発行

文献概要

シンポジウム 新しい精神医学の構築—21世紀への展望

児童青年精神医学の課題—行為障害,注意欠陥・多動性障害の予防と早期治療

著者: 皆川邦直1

所属機関: 1東京都医学研究機構・精神医学総合研究所

ページ範囲:P.171 - P.178

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はじめに
 戦争の傷痕の残る昭和20年代に多かった青少年の凶悪犯罪は,昭和30年代以降に減少したが,この1〜2年,増加傾向に転じた。薬物使用のために少年院に送致される少年が使用することの最も多い薬物は,以前はシンナーであったが,この数年,覚醒剤になっているという。
 登校恐怖症は戦後まもなく米国のJohnsonによって報告されて,我が国でも1957年頃から登校恐怖症の児童生徒が精神科を受診,入院するようになった。文部省ではこの問題を不登校(最近までは学校嫌い)と呼ぶ。そして中学生の不登校は増加し続けている。また最近では都内の小学校で児童が教室内を歩き回るなどの問題行動のために授業が成立しないクラスもあるという。
 このように先進国では都市化と経済成長が進むにつれて,子どもたちに精神発達上の諸問題が生じるが,それはなぜか。この疑問に1つの回答を示したのは英国の児童精神科医・児童分析医のJohn Bowlby2)で,次のように述べている。
 「多くの後進国では,家族は一般的に大集団で,三代あるいは四代にわたる世代が,一緒に生活していることがある。必要とあれば,祖母,おば,姉が直ちに母親の代理役を果たすことができる。その上,もしも,家の稼ぎ手に不幸が起こると,経済的援助の手が容易にさしのべられる。……したがって本当に深刻な愛情喪失児の問題は,このような大家族集団が存在する社会には発生しない。これは西欧の近代化された社会においてこそ問題になる。このような地域に住む若い男女は,他の地方からの移住者が多く,……大多数の家族は地域社会との結びつきを失い,緊急の場合に隣人を助ける伝統は社会から消失する」。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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