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研究と報告
Maslowの欲求階層からみた過食症患者の心理と治療過程
著者: 野見山晃1 田代信維1
所属機関: 1九州大学医学部神経精神医学教室
ページ範囲:P.353 - P.362
文献購入ページに移動【抄録】 過食嘔吐を主症状とする25歳の女性M子の治療を経験した。一般に精神療法において,何が重要であり,何に働きかけ,何が起こり,病態水準がどこにあるかを検討した時,明確にそのことを整理提示することや,患者が抱えていた苦悩,状態の変化,治療者の介入解釈の意味,姿勢を同僚にわかりやすく伝えることは容易ではない。
そこで,M子の治療過程を,Maslowの5段階欲求分類によって吟味した。M子は所属と愛情の欲求で挫折しており高次の欲求へ進めず,また高次の欲求は低次の欲求を脅かしていた。その結果低次の欲求の充足に甘んじていた。その欲求をめぐる治療者の介入によって治癒していた。治療の場に表出された欲求の段階を推測し,その相互性に留意し,治療者の介入がどの欲求に向けられているかを意識しておくことが,早期に患者の中核的葛藤を把握し,治療の見通しを平明とすることに有用であると考えた。
そこで,M子の治療過程を,Maslowの5段階欲求分類によって吟味した。M子は所属と愛情の欲求で挫折しており高次の欲求へ進めず,また高次の欲求は低次の欲求を脅かしていた。その結果低次の欲求の充足に甘んじていた。その欲求をめぐる治療者の介入によって治癒していた。治療の場に表出された欲求の段階を推測し,その相互性に留意し,治療者の介入がどの欲求に向けられているかを意識しておくことが,早期に患者の中核的葛藤を把握し,治療の見通しを平明とすることに有用であると考えた。
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