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文献詳細

雑誌文献

精神医学42巻4号

2000年04月発行

研究と報告

血漿中HIV-RNA量の増加とともにAIDS痴呆コンプレックスが進行した1症例

著者: 平林直次1 前原良子1 金子雅彦1 飯森眞喜雄1 山元泰之2 福武勝幸2

所属機関: 1東京医科大学病院神経精神医学教室 2東京医科大学病院臨床病理学教室

ページ範囲:P.379 - P.385

文献概要

【抄録】 AIDS痴呆コンプレックス(ADC)またはHIV脳症は中枢神経系へのHIV感染症によって引き起こされることが知られているが,ADCの重症度と血漿中のHIV-RNA量との関係は明らかではない。本症例は,免疫機能が重度に低下したHIV感染症の32歳男性で,CDC分類でC3期に相当していた。本症例は痴呆を示し,ADCと診断された。ADCによる症状は,血漿中HIV-RNA量の増加に伴って進行した。脳波上は,基礎律動が徐波化し,MRI,T2イメージでは脳萎縮と皮質下における異常高信号域が認められた。本症例では,ADCの進行と血漿中HIV-RNA量との問には正の相関が観察された。ただ,髄液中HIV-RNA量は測定しておらず,不明であった。
 ほとんどの抗HIV薬は血液・脳関門を経て十分に中枢神経系へ移行することは困難である。このように抗HIV薬の中枢神経系への移行率は低値であることから,血漿中と髄液中とではIHV-RNA量に解離が起こる可能性がある。また,血漿中と髄液中では薬剤耐性が異なるHIV株が出現する可能性もある。以上を踏まえると,今後ADCの進行と,血漿中さらには髄液中HIV-RNA量,および薬剤耐性との関係を検討する必要がある。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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