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文献詳細

雑誌文献

精神医学42巻5号

2000年05月発行

文献概要

特集 精神疾患の発病規定因子

分裂病の生物学的脆弱性

著者: 沼知陽太郎1

所属機関: 1東北大学大学院医学系医科学専攻精神神経学分野

ページ範囲:P.457 - P.462

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精神分裂病の脆弱性について
 精神分裂病(分裂病)の病態と関連する生物学的指標の大部分は,健常者からの量的な偏奇として現れ,通常は分裂病の全例が異常値を示すことはない。また,発病様式,症状,経過,予後,治療反応性などからも,分裂病が複数の病態から構成される異種的な疾患であることが推定されている。したがって,分裂病で認められた生物学的変化を解析するに当たっては,得られた結果が分裂病の状態(state marker),脆弱性(vulnerability marker),あるいは両者(mediating vulnerability indicator)のいずれを反映するか判別することが極めて重要な作業となってくる。
 分裂病を特有の症状群からなる「分裂病エピソード」と規定し,その基盤として「脆弱性Vulnerability」という概念を最初に提唱したのはZubin & Spring25)である。彼らは分裂病の成因として生態学,発達,学習,遺伝,内部環境,神経生理の6領域の仮説を展望し,そのいずれも単一では脆弱性になりえず,それらの相互作用によって分裂病エピソードへの脆弱性が形成されるとした。さらにZubinは(a)脆弱性はschizotrope(分裂病エピソードを持つ人)に固有のもので,Falconerのいう準備状態liabilityのように健常人にもみられるものではない,(b)脆弱性を持つ個体に十分なストレッサーが加わった時に分裂病エピソードが現れる,(c)大半のエピソードは一過性に経過して回復する,(d)回復しても,次のエピソードへの脆弱性が長期にわたって残る,としている19)

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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