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文献詳細

雑誌文献

精神医学42巻6号

2000年06月発行

文献概要

展望

パニック障害と全般性不安障害—最近の知見

著者: 前田久雄1

所属機関: 1久留米大学医学部精神神経科

ページ範囲:P.562 - P.573

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はじめに
 DSM-IVによる不安障害(anxiety disorder)は,パニック障害や全般性不安障害だけでなく,特定の恐怖症,社会恐怖,強迫性障害,急性ストレス障害,外傷後ストレス障害などを含んだ広い概念として用いられている4)。いずれも不安や恐怖が病態の中核となっていることに依拠している。浮動性不安を特徴としたDSM-IIまでの不安神経症は,DSM-III以後,パニック障害(panic disorder;PD)と全般性不安障害(generalized anxiety disorder;GAD)とに分離され今日に至っている。
 1964年にKlein45)が急性不安発作がイミプラミンにより抑制されることを,さらに1967年にPittsとMcClure61)が不安神経症患者に乳酸ナトリウムを静注すると不安発作が誘発されることを報告したことを契機として,不安発作の生物学的機序に関する関心が次第に高まっていった。先に述べたように,DSM-III(1980)で不安神経症がPDとGADとに分けられ,不安発作がパニック発作(panic attack)と呼称されるようになって,パニック発作の生物学的研究は一挙に隆盛を究めるに至った。GADは,当初,残遺カテゴリーとして残されたにすぎなかったが,臨床実態に則して診断基準が改定されてゆくとともに,その疾患単位としての位置付けもかなり確かなものになってきた。一方では,本来の浮動性不安を主症状とする本障害においても,PDでの生物学的知見との異同を検証する形の研究が盛んになってきている。
 ちなみに,アメリカの一般人口中の期間(12か月)および15〜54歳の生涯有病率(DSM-III-R)は,PDで2.3%と3.5%,GADでは3.1%と5.1%となっており,いずれも女性に多い43)

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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