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文献詳細

雑誌文献

精神医学42巻7号

2000年07月発行

文献概要

資料

痴呆患者のターミナルケア—医学的介入に関する看護スタッフの意識調査

著者: 藤川徳美1 古田敏江2 秋田幸子2

所属機関: 1国立療養所賀茂病院精神科 2国立療養所賀茂病院看護部

ページ範囲:P.761 - P.767

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はじめに
 ターミナルステージ(終末期)とは,(1)がん,肝硬変,心不全,腎不全などの脳や内臓の重い病気,(2)脳出血やクモ膜下出血などの回復不能な意識障害,(3)重度痴呆,において自力摂食が不能な状態と定義される2)
 がん患者におけるターミナルケア(終末期医療)に関しては,かつての過剰な医学的介入に対する反省に基づいて,スパゲティ症候群(点滴や酸素などのたくさんのチューブにつながれて終末期を迎えること)を避けるとともにquality of life(QOL)を重視する立場から延命処置を行わない医療,ホスピスケアが導入されている。1997年のがん末期患者のターミナルケアの実施状況調査1)では,71%は合意のもとに延命処置をしない治療を実施し,23%は急変もしくは家族への確認不十分のため延命処置をし,4%は家族が望んだため延命処置を行ったと報告している。
 実際のホスピスケアにおいては,ターミナル中期(生命予後数週間)には,IVHを中止し精神的ケアや症状緩和に力点を置き,ターミナル未期(生命予後数時間)にはモニターを使用せずにスタッフが時・時間を共有して患者の不安や恐怖心を和らげるといった非言語的コミュニケーションに力点が置かれている。IVHの中止やモニターを使用しないことのevidenceに関して国立がんセンターに問い合わせたところ,その部分に関する決定的な仕事(evidence)はないとの回答であった。しかし逆に,evidenceがないのに導入されているということは,それだけ実際のニーズが多くあることを示しているともいえる。
 上記のように,がん患者のターミナルケアに関しては研究報告も多くあり,その結果が現実に臨床に実践されてきている。しかし,がん患者と同じターミナルステージである重度痴呆患者におけるターミナルケアの報告はほとんど行われていない。重度痴呆患者は自己意志決定能力を欠くため,点滴1本行うにしても身体抑制が必要となる場合が多い。そのため,我々は日々の臨床場面において,重度痴呆患者のターミナルステージにおいてどの程度の医学的介入を行うべきかの判断に苦慮することが多い。将来的には,痴呆患者のターミナルケアに関するガイドラインを作成して実行することが必要であるが,その第一歩として当院の老人精神(痴呆)病棟に勤務した経験を持つ看護スタッフを対象に,痴呆患者のターミナルステージの医学的介入に関する意識調査を行ったので報告する。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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