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文献詳細

雑誌文献

精神医学42巻9号

2000年09月発行

文献概要

試論

Evidence-Based Psychiatryの視点から見た初期分裂病

著者: 加藤忠史1

所属機関: 1東京大学医学部附属病院精神神経科

ページ範囲:P.983 - P.989

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はじめに
 精神分裂病は,いったん発症すれば多くの場合残遺症状を残す,精神疾患の中でも最も重症で難治な疾患で,未治療期間が長いほど転帰が悪いことなどからその早期診断,早期治療,発症予防が重要と考えられている8)
 しかしながら,その早期診断については議論のあるところである。精神分裂病のDSM-IV診断基準には,精神分裂病の前駆症状が記載されているにもかかわらず,前駆症状のみを呈した場合にいかに診断するかが明らかにされていないため,DSM-IVを日常臨床に使用している者にとっては,こうした患者をどのように診断するかは悩みの種である。
 日本におけるこうした研究の第一人者で,独自に「初期分裂病」の概念を提示して研究を行っている中安が,DSMを激しく批判し,操作的診断基準やEvidemce-Based Psychiatry(EBP)を志す精神科医と真っ向から対立し,全くかみ合わない議論19)が行われてきた経緯からか,中安の初期分裂病や精神分裂病の初期診断について,操作的診断基準やEBPの文脈から考察されることは少なかった。
 DSMを日本に紹介した高橋三郎教授の元に学び,その後中安助教授に精神症状学の薫陶を受けた筆者としては,こうした不毛な論争を乗り越え,患者にとって本当に有益な診断学を確立していく必要性を感じている。そこでこれらの論争を止揚し,今後の研究の方向性を探る目的で,精神分裂病の初期診断についての論点を,EBPの視点からまとめ直してみたい。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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