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文献詳細

雑誌文献

精神医学43巻10号

2001年10月発行

資料

痴呆患者のターミナルステージにおける医学的介入と身体抑制

著者: 藤川徳美1

所属機関: 1国立療養所賀茂病院

ページ範囲:P.1097 - P.1103

文献概要

はじめに
 痴呆のターミナルステージ(終末期)は,狭義には,(1)痴呆があり,(2)患者との意志疎通が極めて困難か不可能な状態にあり,(3)痴呆の原因疾患による神経症状として嚥下が困難か不可能な状態にあり,これらの状態が非可逆的である状態を示し,広義には,狭義の状態に加え,身体疾患がターミナルステージにある状態と定義される3)。がん患者におけるターミナルケア(最近ではend-of-life careと呼ばれることが多い)に関しては以前から数多くの報告があり,過剰な延命処置を行わないホスピスケアが導入されているが,痴呆患者におけるターミナルケアの報告は少ない。
 痴呆のターミナルステージでは,患者が同意能力を欠くため,医学的介入に際し身体抑制が必要となることも多く,我々医療者はその施行の是非の判断に苦慮することが多いが,今までこのものを検討した報告はほとんどない。前回我々は,当院の痴呆病棟に勤務した経験のある看護スタッフに対して,医療者の立場から重度痴呆患者のターミナルステージにおける各種医学的介入の施行の是非についてどのように考えるかを調査した1)。その結果,「積極的に行う」との意見はほとんどなく,「最低限のみ行う」「行わない(身体抑制をしない)」という意見に分かれた。点滴については,24時間持続身体抑制が必要となる「IVH」「24時間持続点滴」は行わないが,「500mlの点滴2本」「100mlの点滴2本」は時間を限定した身体抑制を行ってでも行うという意見が多数を占めた。その他の医学的介入の是非については意見が分かれ,統一した見解が得られなかった。
 今回は,徘徊を主訴とする重症痴呆患者のターミナルステージにおける各種の医学的介入の是非について,身体抑制との関係も含めて(A)自分自身が患者となった場合どうしたいか,(B)自分の家族が患者となった場合どうしたいかを調査し,前回の医療者の立場での調査と比較した。また,痴呆のターミナルステージにおいて,医療者として医学的介入に伴う身体抑制についてどのように考えるかを尋ねた。「身体抑制はできるだけ減らすべきだ」と答えた人には,医学的介入に伴う身体抑制を行う場合の1日あたりの上限(時間)と,身体抑制を行う場合の日数の上限(日)をどのように設定するかを調査した。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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