文献詳細
シンポジウム 精神分裂病の心理社会的治療の進歩
精神分裂病を持つ人たちに対するケースマネジメントと心理教育—エンパワーメントとノーマライゼーションの視点から
著者: 大島巌1 長直子2
所属機関: 1東京大学大学院医学系研究科精神保健学分野 2東京都精神医学総合研究所
ページ範囲:P.1129 - P.1133
文献概要
心理教育は,精神障害など受容しにくい問題を持つ人たちに対して,正しい知識や情報を心理的に十分配慮しながら伝えて,病気や障害によってもたらされる諸問題・諸困難の対処方法を習得していただき,主体的な療養生活を営めるよう援助する方法である11)。対象者が自ら抱えた困難を十分に受け止め,現実に立ち向かう力量を身に付けること,必要な援助資源を主体的に利用できることを目指している。一方,ケースマネジメントは,生活全般にわたるニーズとさまざまな社会資源との間に立ち,複数のサービスを包括的かつ継続的に提供する方法である13)。利用者のニーズや意欲を引き出し,包括的なサービスを提供することにより,生活の質が確保された当たり前の生活を実現することを目指している。
精神障害者およびその家族に対する心理教育とケースマネジメントは,それぞれ効果評価研究によって有効性が世界的に確認されつつある。これらは,欧米で脱施設化を推進し地域ケアを効果的に進めるために開発された援助方法である。世界最多の精神病床を持つ日本では退院促進やより良い地域ケアの実現に活用される必要がある。
本稿では,日本の地域精神保健福祉に必要とされている心理教育とケースマネジメントという2つの援助方法の効果研究の知見を整理するとともに,それらを統合的に提供することによって,日本においてノーマライゼーションと利用者のエンパワーメントを促進するのに有効なプログラムのあり方と,その効果評価研究のあり方を検討する。
なお,ケースマネジメントは行政用語ではケアマネジメントと呼ばれているが,本稿では同義で用いる。
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