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特集 青少年犯罪と精神医学
青少年犯罪と精神科医療
著者: 松田文雄1
所属機関: 1松田病院
ページ範囲:P.1203 - P.1208
文献購入ページに移動はじめに
昨今の青少年犯罪に対して,精神科医療の果たすべき役割があらためて問われる状況であると考えられる。最近の少年非行の傾向として,凶悪犯で検挙された少年のうち,過去に非行歴のない初発型の子どもが約半数を占めると言われている。すなわち,それまで非行歴のない,いわゆる「普通の子」がなぜそのようなことをしたのかという疑問が投げかけられる。このような子ども達と精神科医療が事前に出会うことはまれであると言えよう。しかし,犯罪を起こし,検挙され,精神鑑定の結果,初めて精神科医療とのかかわりが生じることは十分に考えられる。一方,非行の問題に対し,精神科医療の場でかかわることは決して珍しいことではない。また,不登校,家庭内暴力,家出,性的逸脱行為,有機溶剤中毒などのさまざまな相談を保護者から受ける場合,治療経過中に少年の行動が犯罪に結びつくことがあり,医療と司法の間で直接あるいは間接的に精神科医がかかわることは少なくない。その背後には,家庭環境や養育環境,学校生活,社会環境,生物学的背景などがある。臨床家として,問題行動の理解という観点から,きめ細かくこれらの背景についてその子ども特有の心的体験を明確にしていくことが必要であり,精神医学的関与が求められる。また,多くの症例から得られた情報を基に,共通する問題を検討し,予防医学という観点から問題行動への関与も問われる。精神科医療という観点から,これら諸点について以下に述べたい。
昨今の青少年犯罪に対して,精神科医療の果たすべき役割があらためて問われる状況であると考えられる。最近の少年非行の傾向として,凶悪犯で検挙された少年のうち,過去に非行歴のない初発型の子どもが約半数を占めると言われている。すなわち,それまで非行歴のない,いわゆる「普通の子」がなぜそのようなことをしたのかという疑問が投げかけられる。このような子ども達と精神科医療が事前に出会うことはまれであると言えよう。しかし,犯罪を起こし,検挙され,精神鑑定の結果,初めて精神科医療とのかかわりが生じることは十分に考えられる。一方,非行の問題に対し,精神科医療の場でかかわることは決して珍しいことではない。また,不登校,家庭内暴力,家出,性的逸脱行為,有機溶剤中毒などのさまざまな相談を保護者から受ける場合,治療経過中に少年の行動が犯罪に結びつくことがあり,医療と司法の間で直接あるいは間接的に精神科医がかかわることは少なくない。その背後には,家庭環境や養育環境,学校生活,社会環境,生物学的背景などがある。臨床家として,問題行動の理解という観点から,きめ細かくこれらの背景についてその子ども特有の心的体験を明確にしていくことが必要であり,精神医学的関与が求められる。また,多くの症例から得られた情報を基に,共通する問題を検討し,予防医学という観点から問題行動への関与も問われる。精神科医療という観点から,これら諸点について以下に述べたい。
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