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文献詳細

雑誌文献

精神医学43巻11号

2001年11月発行

特集 青少年犯罪と精神医学

非行と児童相談所—反社会的な行動をとる児童に対する福祉現場のかかわり

著者: 本間博彰1

所属機関: 1宮城県子ども総合センター

ページ範囲:P.1209 - P.1214

文献概要

はじめに
 児童相談所は反社会的な行動をとる子どもたちに対して犯罪という視点ではかかわらない。取り締まる,あるいは罰を科すという視点ではなく,教護という視点で長くかかわってきた。生育環境の問題性に重きを置き,非行進度が深まることから子どもを保護し,社会的な規範を身につけるべく教育するという考え方によってこの取り組みが行われてきた。2001年からは児童相談所の相談分類は教護から虞犯に変わり,教護という名称が消え非行相談は虞犯と触法相談となった5)。非行近縁の問題のとらえ方については少年法による影響を受けてのことと思われる。ちなみに児童相談所運営指針によれば,虞犯相談とは,虚言癖,浪費癖,家出,浮浪,乱暴,性的逸脱などの虞犯行為,問題行動のある児童,警察署から虞犯少年として通告のあった児童,または触法行為があったと思料されても警察署から法第25条による通告のない児童に関する相談,とされている。
 反社会的な行動をとる子どもたちの指導には,児童福祉法と少年法が対応しているが,児童相談所はこの二つの法律の枠の中でこうした問題を持つ子どもとかかわる。つまり,児童相談所は行政機関という性格のゆえに,法の規定や社会的な要求に応えてゆくことが強く求められる。そのため,子どもの権利擁護と治療的な介入の狭間に立たされることもある。また,近年は激増する児童虐待対策の中心的な機関として,崩壊の一途をたどる家庭の苦悩やそれを取り巻く地域社会の狼狽ぶりにいささか振り回されているところでもある。
 さて,反社会的な行動をとる子どもに対する児童相談所の臨床は,関連する施設のコンセプトと大きくかかわる。代表的な施設は児童自立支援施設で,教護院と長らく称されてきたが,1997年の児童福祉法の改正により児童自立支援施設と改名され,従来の非行児童の保護と指導に加え治療的な取り組みが求められるようになった。その理由としては,非行に走る子どもたちの背景に家族的な問題が多いこと,また心の傷を持った子どもが多いこと,教護という考え以上に治療やリハビリテーションという取り組みが必要になってきたからと考えられる。本稿ではこうした児童相談所の非行をめぐる問題と課題を児童相談所の現場に長らく身を置く精神科医の経験から述べてみたい。
 なお,本稿では,子どもについて,児童,少年といった表現を使用しているが,子どもは総称として使用し,児童は児童福祉法に,少年は少年法にかかわりのあるテーマについて述べるとき使用している。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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