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文献詳細

雑誌文献

精神医学43巻11号

2001年11月発行

特集 青少年犯罪と精神医学

少年犯罪と被害者—その種々相

著者: 山上皓1

所属機関: 1東京医科歯科大学難治疾患研究所犯罪精神医学

ページ範囲:P.1215 - P.1221

文献概要

はじめに
 最近の少年事件が人々に不安や戸惑いをもたらすのは,その犯罪の態様に,容易には理解しがたい質的な変化を感じとっているからであろう。少年たちが,「世間を騒がせたい」,「人を殺してみたかった」などと言いながら,いとも簡単に人を殺し,反省することを知らないという異常な事態を前にして,わが国社会は困惑し,まだ有効な対応策を見いだせずにいる。事態の解明は容易でないであろう。少年犯罪には,実に多くの要因が反映されているからである。個々の少年の資質問題に加え,家庭や学校,地域社会など,少年の育成にかかわるあらゆる環境,その時代の社会文化的な変化,犯行当時の状況要因などが,さまざまな形で複雑に絡み合いながら影響し,犯罪を生み出している。
 筆者5,6)はかねてより,近年の少年非行の動向を正しく解し,その対策を検討するには,まず,わが国社会の戦後における社会化機能の総体的な低下,すなわち,わが国社会が家庭,学校,地域社会,国家,それぞれのレベルにおいて,少年を社会人として健全に育成する能力を大きく低下させてきた事実を直視する必要があることを指摘してきた。
 本特集においてはまず,家庭における虐待や学校におけるいじめなど,過去の被害経験が犯罪者に及ぼしている影響について概観したい。最近の少年犯罪に関する重要な調査報告には,この問題の深刻さを示唆する所見が共通してうかがえるからである。次いで,筆者がかつて精神鑑定をする機会を得た事例を紹介し,いじめや虐待が,どのようにして犯罪へと結びついて行くかを例示したい。最後に,筆者が被害者支援を通じて接する機会を得た被害者の例を示し,被害からの回復のために必要な治療的援助のあり方についても述べたいと思う。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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