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文献詳細

雑誌文献

精神医学43巻12号

2001年12月発行

文献概要

展望

自殺の生物学的原因究明の現状と今後の展望

著者: 張賢徳1

所属機関: 1帝京大学医学部附属溝口病院精神神経科

ページ範囲:P.1286 - P.1294

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はじめに—定義上の問題点
 ある事象について議論を始める時,まずその事象の定義付けを行わねばならない。「自殺」は日常的に用いられる言葉であるが,その定義は曖昧である。「自殺を議論する場合の最初の難問は,その定義に関する問題である」という高橋55)の指摘のとおり,専門家の間でも意見の分かれるところである。例えば,Durkheim23)に代表されるように,自殺を「自己によってなされた一切の死」と幅広く定義する考え方がある一方,自殺念慮と死の結果の予測性を定義に加える限定的な考え方もある28,42)
 筆者の考えは,「自ら自己の生命を絶とうとする行為を自殺行為(または自殺企図)といい,結果として死に至ったものを自殺既遂(または自殺),死に至らなかったものを自殺未遂と呼ぶ」という稲村26)の定義に近い。つまり,自殺念慮と死の結果の予測性の有無を問わない広い定義である。稲村26)の論拠は,「一般に自殺意図の明確な者は自殺者のうちでも意外に少なく,意志統御の混乱がむしろ彼らの特徴ですらある」という点であり,これもまた筆者の同意するところである。自殺を「自己によってなされた一切の死」と広く定義して,自殺念慮や死の結果の予測性などについては,それらを軸として自殺を下位分類すればよいと筆者は考える。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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