文献詳細
文献概要
短報
Fluvoxamineが奏効した家庭内暴力の1例
著者: 伊藤陽1 吉田浩樹1 小林勇1
所属機関: 1新津信愛病院
ページ範囲:P.1353 - P.1356
文献購入ページに移動子供が親に対して暴力を振るう形の家庭内暴力はわが国特有の現象であるとされている5)。この病態は不登校やひきこもりと密接に関連し,その原因が主として家族病理に由来すると考えられているために,治療としては家族療法も含めた心理的アプローチが行われることが多い3,4)。また家庭内暴力における衝動性の制御不全や,随伴してみられる抑うつ,対人緊張,社会恐怖,強迫症状などを標的に薬物治療も行われる。稲村6)は抗精神病薬の有効性を高く評価し,野田ら9)は抗てんかん薬のcarbamazepineと抗精神病薬とりわけhaloperidolの有効性を指摘している。川谷7)はこの病態の家系内に感情病が多いことから,抗うつ薬,carbamazepine,lithium carbonateが有効であるとしている。最近,わが国においても臨床応用されるようになったselective serotonin reuptake inhibitor(以下SSRI)8)も家庭内暴力に対して奏効するかどうかは興味の持たれるところであるが報告例はまだ見当たらない。今回,筆者は不登校,ひきこもりに続いて,家庭内暴力を振るうようになった1例にfluvoxamilleを投与して良好な結果を得たので,若干の考察を加えて報告する。
掲載誌情報