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文献詳細

雑誌文献

精神医学43巻2号

2001年02月発行

文献概要

特集 今,なぜ病跡学か

病跡学の今日

著者: 加藤敏1

所属機関: 1自治医科大学精神医学教室

ページ範囲:P.118 - P.127

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はじめに
 優れた芸術家や作家,思想家の人となりや,創造性についての研究は,評論家や哲学者などにより多数なされている。サルトル48)によるフロベール論や江藤淳15)による漱石研究がそのよい例である。この点で,学際的領域にかかわっている病跡学の独自性は精神医学が築き上げた疾病概念や病態把握,および癒しといった観点から,人間の創造性に光を当てるという問題枠に求められる。今日,病跡学研究はさまざまな関心のもとにいろいろな国で行われている。おおまかに言えば,創造性と精神障害という問題枠に対する接近の仕方の違いは,それぞれの国の精神医学の土壌をそのまま反映するといってよい。
 実際,ドイツ語圏およびわが国では精神病理学の観点から,また,フランス語圏ではフロイト,ひいてはラカンの精神分析の見地から,創造過程を個々の天才的な人について明らかにしようとする研究が多いのに対し,英米圏では最近,操作的診断に基づいた統計学的な多数例研究が注意をひく。
 小論ではまず,創造性と精神障害の関連に関する多数例研究を一瞥した上で,今日の精神病理学の観点から創造過程や創造行為がいかにとらえられるのかについて論じ,最後に病跡学の新しい動向に触れたい。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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