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文献概要
特集 今,なぜ病跡学か
神経症・境界例と病跡学
著者: 福島章1
所属機関: 1上智大学文学部心理学科
ページ範囲:P.169 - P.174
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1.疾病論
神経症の概念は,古く18世紀のCullenの命名に遡るが,心因にもとづく心理的障害という近代的な定義は今世紀に入ってからのもので,神経症という上位概念の下に,その後さまざまな類型が命名された。
一方,境界例の概念は,始めは偽神経症性分裂病,潜伏分裂病,外来分裂病,境界状態(分裂病の前後の状態),境界患者(疾病単位)などと呼ばれるなど,その概念は始めから大いに変遷を重ねたが,おおむね,神経症と精神病との「境界」領域と考えられてきた。(このほかに,正常,精神病,人格異常,神経症の4つに跨る境界状態とするSchmidbergの考え方もある)。そして,症状学的にはGundersonらの臨床的な症状の整理や記述,精神力動学にはKernbergの境界人格構造(BPO)の提唱などによってその理解が大いに進められたが,病跡学の領域においてこれらの貢献が活用された例はあまり多いとはいえない。
1.疾病論
神経症の概念は,古く18世紀のCullenの命名に遡るが,心因にもとづく心理的障害という近代的な定義は今世紀に入ってからのもので,神経症という上位概念の下に,その後さまざまな類型が命名された。
一方,境界例の概念は,始めは偽神経症性分裂病,潜伏分裂病,外来分裂病,境界状態(分裂病の前後の状態),境界患者(疾病単位)などと呼ばれるなど,その概念は始めから大いに変遷を重ねたが,おおむね,神経症と精神病との「境界」領域と考えられてきた。(このほかに,正常,精神病,人格異常,神経症の4つに跨る境界状態とするSchmidbergの考え方もある)。そして,症状学的にはGundersonらの臨床的な症状の整理や記述,精神力動学にはKernbergの境界人格構造(BPO)の提唱などによってその理解が大いに進められたが,病跡学の領域においてこれらの貢献が活用された例はあまり多いとはいえない。
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