文献詳細
文献概要
短報
摂食障害患者における養育体験の検討—EMBUを用いた評価
著者: 岡本明子1 山下達久1 名越泰秀1 和田良久1 加嶋晶子1 福居顯二1
所属機関: 1京都府立医科大学精神医学教室
ページ範囲:P.443 - P.445
文献購入ページに移動摂食障害の発症要因の1つとして,親子関係の問題が指摘されてきた。Bruch1,2)は,支配的・過干渉な母親が,乳幼児の内的なニードを適切に読み取れないことによって生じる自我同一性の障害が,摂食障害を生み出すことを指摘している。また,石川5,6)は神経性食欲不振症患者の父親の特徴として,指導性が欠如し,家庭で父親としての役割を不十分にしか果たしていないことを挙げ,父親を再認識しようとする発達段階に本症が好発することを指摘している。
そのため,近年,摂食障害患者の養育体験に関する実証研究が行われ4,11,12),養育体験に関する評価尺度としてParental Bonding Instrument(PBI)(Parkerら7),1979)が用いられている。PBIは25項目からなる自己記入式質問紙で,16歳までに親から受けた養育体験を遡及的に評価し,養育体験を「care」,「overprotection」の2つの下位尺度で評価する。
一方,PBIとは別の養育体験の評価尺度として,Egna Minnen av Barndorf Uppfostran(EMBU)(Perrisら9),1980)がある。EMBUは,PBIと同様に自己記入式で,両親の養育行動を遡及的に評価する方法であるが,81項目からなり,「拒絶」,「情緒的暖かみ」,「過保護」,「ひいき」の4つの下位尺度が抽出されている。そのためより多面的に養育体験を評価でき,また各質問項目ごとに両親を同時に評価するため養育行動の差が明確化されやすい。しかし,EMBUを用いた検討は海外ではいくつかあるものの,本邦ではみられない。そこで,今回我々はEMBUを用いて摂食障害の養育体験を評価した。
掲載誌情報