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特集 社会構造の変化と高齢者問題
痴呆性老人と入院形態—同意能力に関連して
著者: 森村安史1 永野修2
所属機関: 1樹光会大村病院 2仁明会精神衛生研究所
ページ範囲:P.637 - P.641
文献購入ページに移動はじめに
精神科病院における臨床現場では,患者の隔離,拘束を主とする行動制限の告知やそのカルテ記載などに十分な人権的配慮を行っている。また精神保健福祉法においても精神医学的知識や経験とともに精神科医への高い職業倫理を要求している。しかしながら痴呆を有する高齢者を精神科病棟に入院させることについて,マスコミで問題として取り上げられたり,善意の精神科医の痴呆症への積極的な取組みが必ずしも社会の評価を十分に得られているとも言い難い。このことの理由の1つとして,精神科医療における行動制限のあり方や患者の同意能力判定についてのあいまいさも考えられる。痴呆老人を入院させる場合に人権に配慮しなければならないことは当然であるが,その際には患者の同意能力についても判定しなければならない。痴呆患者に対する同意能力の判断基準は,精神科医の中でも必ずしも一定ではなく,入院形態をどのように判断するか迷うこともしばしばである。このことは同意能力に関するリーガル・モデルの厳格さと臨床面の現実との差異が大きいことも一因である。
精神科において臨床現場と倫理性との折り合いを図り,どのように整合性を保つかは重要な課題である。今回本稿では,その前提となるインフォームド・コンセントの法理,同意能力の概念,特に痴呆患者の同意能力について論述したい。
精神科病院における臨床現場では,患者の隔離,拘束を主とする行動制限の告知やそのカルテ記載などに十分な人権的配慮を行っている。また精神保健福祉法においても精神医学的知識や経験とともに精神科医への高い職業倫理を要求している。しかしながら痴呆を有する高齢者を精神科病棟に入院させることについて,マスコミで問題として取り上げられたり,善意の精神科医の痴呆症への積極的な取組みが必ずしも社会の評価を十分に得られているとも言い難い。このことの理由の1つとして,精神科医療における行動制限のあり方や患者の同意能力判定についてのあいまいさも考えられる。痴呆老人を入院させる場合に人権に配慮しなければならないことは当然であるが,その際には患者の同意能力についても判定しなければならない。痴呆患者に対する同意能力の判断基準は,精神科医の中でも必ずしも一定ではなく,入院形態をどのように判断するか迷うこともしばしばである。このことは同意能力に関するリーガル・モデルの厳格さと臨床面の現実との差異が大きいことも一因である。
精神科において臨床現場と倫理性との折り合いを図り,どのように整合性を保つかは重要な課題である。今回本稿では,その前提となるインフォームド・コンセントの法理,同意能力の概念,特に痴呆患者の同意能力について論述したい。
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