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短報
Fluvoxamineが著効した抜毛症(trichotillomania)の1例
著者: 和久津里行1 中山和彦1 牛島定信1
所属機関: 1東京慈恵会医科大学精神医学講座
ページ範囲:P.677 - P.679
文献購入ページに移動抜毛症(trichotillomania)は1889年,フランスの皮膚科医Hallopeauによって初めて報告された疾患3)であり,現在のICD-10分類では「習慣および衝動の障害(F-63)」に含まれる。臨床的には“髪の毛を抜くという衝動に抵抗することに失敗して生じる,顕著な毛髪欠損によって特徴づけられる障害”と定義されている。治療については以前より精神療法や行動療法,また,抗うつ薬,抗精神病薬,抗不安薬などの薬物療法が試みられてきたが,その方法が確立されたとはいえない。その中で選択的セロトニン再取り込み阻害薬(Selective Serotonin Reuptake Inhibitors:SSRIs)が有効であるという興味深い報告がなされるようになった1,2,5)。本邦では,clomipramineを用いた著効例の報告6)があるが,SSRIsによる有効例の報告はまだみられない。今回,我々はSSRIsであるfluvoxamineの投与により,10年の経過を持つ抜毛症および抑うつ症状や過食行動が速やかに改善した症例を経験したので,若干の考察を加え報告する。
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