icon fsr

文献詳細

雑誌文献

精神医学43巻8号

2001年08月発行

研究と報告

自傷を機に精神症状の特異な変遷を呈した妄想性うつ病の1例

著者: 西岡玄太郎1 三村將1 佐野奈々2 秋庭秀樹1 平井里江子1 渡辺壮一郎1 吉邨善孝3 上島国利1

所属機関: 1昭和大学医学部精神医学教室 2国立病院東京医療センター 3北里大学医学部精神科

ページ範囲:P.869 - P.873

文献概要

【抄録】 妄想性うつ病の経過中に激しい自傷行為を契機に抑うつ症状の消退と妄想内容の変遷を生じた特異な1例を経験した。症例は74歳,女性。72歳時に,抑うつ感,易疲労感,不眠を呈する単極性うつ病として発症し,いったん寛解した。その後,うつ症状の再燃と,「子宮のあたりがもやもやする」「おなかの中がねじれている」という訴えが出現し,近医婦人科へ連日受診し,膣洗浄を受けていた。婦人科疾患は否定的で,心気妄想と体感異常を伴う,妄想性うつ病と診断した。その後,腹部と頸部を多数刺傷する自殺企図を認めたが,企図後は一貫してその自殺企図を否認し,「外国人に襲われた」という追想的な妄想を生じた。自殺企図を契機に,抑うつ症状,心気妄想,体感異常は消退し,新たな被害妄想へ症状に変遷を来したと考えられた。また,本症例では,経過とともに,前頭葉萎縮の進行を認め,器質的な変化が症状修飾に影響した可能性も考えられた。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

雑誌購入ページに移動
icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら