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試論
精神科診療における電話—その功罪と対策
著者: 佐藤裕史1
所属機関: 1東京都立豊島病院神経科
ページ範囲:P.895 - P.903
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患者からの電話への応対は,精神科医に少なからぬ時間と手間を要求する。電話が今ほど気安く用いられなかった頃は,大平21)が回顧するように「電話で診察はしてはならぬ」という教えに従って「それは今度の面接の時にうかがいます」と答えてすみ,「周りをみても,名人級の人は別として,電話で患者の相談に応じている精神科医なんてひとりも居ない」ということだった。しかし生村10)の診療所では電話が日に50本はかかり「ふりかかる電話の嵐をかいくぐって診察する」という。今では,頻回の厄介な電話に困窮したり,自殺を予告する電話にたじろいだりした経験のない精神科医はあるまい。すでに精神科当直医の仕事の相当部分は電話の応対である。初心者は当惑し対処に迷うが,参照すべき論文も少なく2,14,17),先輩医師から習うにせよ,ことが電話という日常的なものであるだけに上級医とて格別方針もないのが実情である。しかし近年医療における電話の利用は急激に拡大し,精神医学への影響も大きい。本稿では精神科診療で遭遇する電話の類型分類を試み,文献を総覧し,問題点について論じて対策を考える。
患者からの電話への応対は,精神科医に少なからぬ時間と手間を要求する。電話が今ほど気安く用いられなかった頃は,大平21)が回顧するように「電話で診察はしてはならぬ」という教えに従って「それは今度の面接の時にうかがいます」と答えてすみ,「周りをみても,名人級の人は別として,電話で患者の相談に応じている精神科医なんてひとりも居ない」ということだった。しかし生村10)の診療所では電話が日に50本はかかり「ふりかかる電話の嵐をかいくぐって診察する」という。今では,頻回の厄介な電話に困窮したり,自殺を予告する電話にたじろいだりした経験のない精神科医はあるまい。すでに精神科当直医の仕事の相当部分は電話の応対である。初心者は当惑し対処に迷うが,参照すべき論文も少なく2,14,17),先輩医師から習うにせよ,ことが電話という日常的なものであるだけに上級医とて格別方針もないのが実情である。しかし近年医療における電話の利用は急激に拡大し,精神医学への影響も大きい。本稿では精神科診療で遭遇する電話の類型分類を試み,文献を総覧し,問題点について論じて対策を考える。
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