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文献詳細

雑誌文献

精神医学44巻1号

2002年01月発行

展望

プリオン病の現在

著者: 川島敏郎1 立石潤2

所属機関: 1佐賀医科大学医学部精神医学講座 2老人保健施設春風

ページ範囲:P.8 - P.23

文献概要

プリオン病とは
 ヒトにおけるクロイツフェルト・ヤコブ病(Creutzfeldt-Jakob disease;CJD),東部ニューギニアに住むフォア族に集団発生したクールー(kuru)や羊におけるスクレイピー(scrapie),牛海綿状脳症(狂牛病)(bovine spongiform encephalopathy;BSE),伝播性ミンク脳症(transmissible mink encephalopathy),シカの慢性消耗性疾患(chronic xvasting disease)などの疾患群は実験的伝播が可能で,病理学的に脳に海綿状変化がみられることから伝達性海綿状脳症(transmissible spongiform encephalopathies;TSE)と総称されてきた。
 1980年台初頭にPrusinerらは,超音波処理,界面活性剤処理,蛋白質分解酵素およびDNA分解酵素処理,分画遠心およびしょ糖濃度勾配遠心を組み合わせて,スクレイピー罹患ハムスター脳から,数千倍に精製濃縮した大量の感染分画を得ることに成功した。最も感染性の高い分画は25%から60%のしょ糖濃度分画に存在し,電子顕微鏡による観察では,2本の微細線維が平行に並び,ゆるくねじれた幅25nm,長さ100-200nmの微細杵状構造物からなっていた。さらに感染分画はほぼ単一の蛋白質からなり,その収量は感染力価に比例し,蛋白質分解酵素による消化や,フルオロリン酸ジイソプロピル,ドデシル硫酸ナトリウム,カオトロピック塩,フェノールや尿素などの蛋白質変性剤の処理により不活化された。Prusinerはこれらの結果をもとに,蛋白質が感染因子であり,一方,感染分画に核酸は証明されず,核酸分解酵素や紫外線照射,その他の化学反応によっても感染性は変わらないことから,核酸の存在は否定されるとして,蛋白質のみからなる感染因子を表す「プリオン(prion)」という新しい用語を提唱した95)

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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