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特集 精神疾患の脳画像解析と臨床応用の将来
精神薬物療法と脳画像解析—神経伝達系の画像解析と受容体占拠率の臨床的意義
著者: 岩淵健太郎1 佐藤光源2 谷内一彦3
所属機関: 1東北大学大学院医学系研究科精神神経学分野 2東北福祉大学大学院精神医学 3東北大学医学部薬理学
ページ範囲:P.1181 - P.1187
文献購入ページに移動精神薬物療法は,現在までほぼ半世紀の経験を重ねているが,実際の臨床場面における薬物の選択およびその用法,用量の決定に関しては,現在でも主治医の経験や習慣などの主観的な判断に頼るところが大きい。精神医学特有の診断学的方法による制約もあるが,evidence based medicine(EBM)の重要性に対する認識が高まっている昨今,精神薬物療法も例外ではなく,科学的な根拠に基づいた治療選択が求められている。
動物やヒト死後脳を用いた研究からは,向精神薬の作用機序や薬物療法に関する多くの知見が蓄積されている。特に抗精神病薬の受容体結合実験からは,統合失調症のドーパミン仮説が提唱され,有力な神経伝達物質仮説として現在に至っている。その一方で,近年の脳画像研究の進展と共に,生きたヒト脳の形態や機能をさまざまな方法で調べることが可能になり,それらの知見は精神薬物療法においても重要な客観的指標となっている。
ここでは,positron emission tomography(PET)や,single photon emission computed tomography(SPECT)を用いた脳機能画像研究のうち,特に神経伝達系の画像解析と受容体占拠率測定の臨床的意義を中心に紹介したい。
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