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特集 精神疾患の脳画像解析と臨床応用の将来
精神分裂病の脳画像解析と臨床応用
著者: 笠井清登1 山末英典1 荒木剛1 工藤紀子1 岩波明1
所属機関: 1東京大学医学部附属病院精神神経科
ページ範囲:P.1189 - P.1196
文献購入ページに移動精神分裂病(以下,分裂病)は,現実の歪曲,認知・情意の障害を主徴とする症候群で,一般人口の生涯罹患率は約1%弱である。思春期から成人早期に発症すること,比較的確立された薬物療法による幻覚妄想状態の消退後もさまざまな認知・行動・情意上の障害が残存し,社会生活上の大きな支障となることから,患者本人・家族にとっても社会経済学的にもきわめて損失が大きい。家族・双生児を対象とした疫学研究から遺伝の関与は確実とされているものの,責任遺伝子の同定をはじめ,決定的な病因は明らかになっていないのが現状である。一方,病因究明とはある程度独立した形で病態を解明する努力が,近年の脳画像技術の進歩に呼応する形で成果を挙げつつあり,分裂病症候の基盤に脳構造・機能異常が存在することが明らかとなってきた10,11)。
分裂病の病態研究の最終目標は,診断・治療への還元である。これまで分裂病の臨床診断や治療は,横断面として認められる臨床症状と現病歴から得られる縦断経過の評価に基づいて行われてきた。診断や治療計画の策定において,簡便で,反復して測定可能で,疾患の本質を反映する生物学的指標の確立が求められている。本稿では,各種脳画像を用いた分裂病の病態研究における我々の成果を中心に紹介しながら,分裂病の疾患診断・病態診断における脳画像検査法の臨床応用可能性について述べる。
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