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雑誌詳細

文献概要

短報

精神科外来におけるC型肝癌患者へのリエゾン精神医学的アプローチの経過中,自然退縮を認めた症例—治療チームにおける看護者の役割

著者: 定塚江美子1 鈴木美恵子1 定塚甫1

所属機関: 1定塚メンタルクリニック精神科

ページ範囲:P.1253 - P.1256

はじめに
 末期がん患者に対しての精神療法的アプローチは,この十数年足らずの間に,一方では,神経精神医学と免疫学とを総合的に関連づけた研究であるpsychoneuroimlnunologyの分野の発展6,11),他方ではがんが心に与える影響と心や行動ががんの経過に与える影響を調べ,QOL(quality of life)を重要視したpsycho-oncologyの分野における研究の発展9,15)により,盛んに行われている。しかし,柳田が指摘しているように,今日に至ってもなお変わることのないものはがん患者の本質であり,それは死を意識することによって何かをなそうという気持ちと,死を恐れて,滅入り,すべてを放棄してしまう気持ちの両者が激しく揺れ動く矛盾した感情であるという14)。その両価的な気持ちをもつ個々の患者に対して,全人的にいかに援助できるかが,現代の医療および,医療スタッフに課せられた重要な問題であろう。しかしながら,患者の心理状態や今後への心構えなどへの配慮さえ行き届かず,ただ『告知』が行われるようになってきていることも事実である。世を憚りながらも,我々の診療科を訪れる患者は未だ希と言わざるをえない。
 今回,C型原発性肝癌であることを知らされずに医療機関を転々としている間に,がん恐怖のあまり,抑うつ状態となり,当院を訪れた患者に対し,あらん限りの全人的医療を試みたところ,肝癌の自然退縮を認めた。チーム医療の中で看護者として,治療的アプローチに関与する機会を得たので,ここに報告する。

掲載雑誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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