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雑誌詳細

文献概要

研究と報告

脳血管性痴呆の自殺企図例の臨床的研究

著者: 伊藤敬雄1 山寺博史1 伊藤理津子1 佐藤忠宏2 遠藤俊吉1

所属機関: 1日本医科大学精神医学教室 2公徳会佐藤病院精神科

ページ範囲:P.1295 - P.1303

【抄録】 脳血管性痴呆における自殺企図例の特徴を検討した。脳血管性痴呆241例のうち3.7%,9例(未遂5例,既遂4例)に自殺企図を認めた。自殺企図例はすべて痴呆初期に分類された。老年期痴呆例全体と比較して平均年齢は低く,痴呆罹患期間は短く,認知機能障害は軽度であった。自殺企図例全例で身体疾患を罹患しており,長期治療を強いられる心血管系疾患に運動器系疾患や感覚器系疾患の合併が自殺企図へのリスクをいっそう高めていると考えられた。自殺企図前に抑うつ状態と共に不安・心気状態を高率に認め,時に妄想状態も自殺企図と関連していた。特に自殺企図前の抑うつ状態と気分障害の既往歴は自殺企図と重要な関係にあると考えられた。また自殺例では,頭部CT所見において基底核領域の多発性梗塞が特徴として指摘された。そして,縊首,裂傷・切傷など患者にとって容易に施行できる自殺手段を選択する傾向がうかがわれ,多くが自殺の予兆なく突然に自殺を図った。

掲載雑誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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