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文献詳細

雑誌文献

精神医学44巻12号

2002年12月発行

文献概要

シンポジウム WHO精神保健レポートと日本の課題

精神保健における社会資源—日本,西太平洋諸国,世界の比較

著者:

所属機関: 1WHO精神保健担当 2WHOテクニカル・オフィサー

ページ範囲:P.1367 - P.1372

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WHO精神保健アトラスのメッセージ
 本日は,WHOジュネーブでの私どもの活動の一部を紹介させていただきます。またいかに各国が,このWHO地区事務局と共に協力していくことができるかを考えていきたいと思います。私の目的は,WHOプロジェクト・アトラスの結果の一部をご紹介することです。このプロジェクトに関しては同僚のDr. Pabllab Maulik氏(ジュネーブ)に,かなりの仕事をしていただきました。彼にまず謝意を表明したいと思います。特に日本に関連した結果を紹介しますが,日本は西太平洋地区あるいは世界全体と比べてどのようなところにあるのかという内容になります。まずこのプロジェクトの背景ですが,皆さんよくご存知のように,精神障害,神経障害の発生率,罹患率は非常に高くなっています。しかし,Herrman先生もおっしゃいましたようにこれは回避ができる,もっと下げることができるはずです。ただこれを回避するために必要な社会資源が入手不可能であったり,あるいはあっても適正に利用されていないのが現在の状況です。そこで私たちがこのプロジェクト・アトラスをスタートさせました。その目的はこの精神保健に関する社会資源を世界各国において見つめていき,モニターしていこうということです。もう1つ申し上げたいことは,精神神経疾患の疫学データがかなり出ております。少なくとも先進国におきましては何十もの研究・調査が行われており,例えば,うつ病患者あるいは統合失調症(精神分裂病)の患者がどのくらいいるかという数字が出ております。ただ,どのようなデータが実際にあるのかということに関する情報が不十分です。そしていかにこのリソース(資源)を効果的に活用できるかということに関しての知識が欠落しているということで,このプロジェクトではこの点に注目したわけです。
 まず,精神保健の社会資源に関して,全世界から関連性のある情報を収集し編纂して,それを普及させるということ,そしてどのような事実があるかを解明するためにアンケートを開発し実施しました。また,メンタルヘルスに関する用語集も作りました。これはWHOの公用語に翻訳しております。これらの用語の一部は各国で使い方がバラバラだったので標準化し,統一を図ったわけです。非常に簡単ですぐわかるような言葉,例えば,“psychiatrist”(精神科医)という言葉でも国によっては意味が違います。国によっては何年も訓練・研修をしないと精神科医になれない,あるいは1年研修を受ければ精神科医になることができる国もあるわけです。したがって統一が必要であったということで,WHOの各地区事務局と緊密に協力し合いながら行いました。全世界のWHOに加盟している191か国で今回の調査を行いました。また,保健省のほか,各国の保健省からの情報のみならず他にも出ている文献であるとか,資料も参考にしております。そして2001年10月に最初のワールド・ヘルス・レポートが発刊され,2冊目の報告書がごく最近出ました。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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