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精神医学における日本の業績
江熊要一の業績
著者: 中澤正夫1
所属機関: 1代々木病院精神科
ページ範囲:P.209 - P.216
文献購入ページに移動はじめに
そのひとが「挙げた成果」だけでなく,後世に与えた影響も指して『業績』ということが許されるならば,江熊要一ほどふさわしい人はいないであろう。精神分裂病の予後がまだきわめて暗い時代,再発は「闇の力」で起こるという「諦観」が支配的であった時代,「働きかけ」による予後の可変性,再発防止を掲げ,その「総合戦略と戦術」をたて実践し,その成果を見届ける前,49歳で逝ったからである。彼が遺した論文もさることながら,彼の分裂病観,医療観が現在隆盛を極めているリハビリテーション,地域医療,障害克服論に大きな影響を与えているからである。その業績を一言でいえば,“「生活」概念を精神医療の中に,初めて持ち込んだ”といえる。本稿では江熊の代名詞のように言われる「生活臨床」を中心に紹介したい。
そのひとが「挙げた成果」だけでなく,後世に与えた影響も指して『業績』ということが許されるならば,江熊要一ほどふさわしい人はいないであろう。精神分裂病の予後がまだきわめて暗い時代,再発は「闇の力」で起こるという「諦観」が支配的であった時代,「働きかけ」による予後の可変性,再発防止を掲げ,その「総合戦略と戦術」をたて実践し,その成果を見届ける前,49歳で逝ったからである。彼が遺した論文もさることながら,彼の分裂病観,医療観が現在隆盛を極めているリハビリテーション,地域医療,障害克服論に大きな影響を与えているからである。その業績を一言でいえば,“「生活」概念を精神医療の中に,初めて持ち込んだ”といえる。本稿では江熊の代名詞のように言われる「生活臨床」を中心に紹介したい。
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