文献詳細
「精神医学」への手紙
塩酸ドネペジルと目覚め現象—牧らの論文に対して
著者: 堀宏治1 冨永格1 織田辰郎1 女屋光基1 寺元弘1
所属機関: 1国立下総療養所
ページ範囲:P.221 - P.221
文献概要
risperidone以来,非定型抗精神病薬の登場により,awakenings(目覚め現象)が知られるようになった3,4)。本現象は非定型抗精神病薬の投与により,精神症状の改善から現実検討能力が高まり,それが時に諸刃の剣となり,自殺企図などかえって好ましくない症状を呈するものである3,4)。精神症状の改善した患者は新しい精神状態を経験するとともに新しい現実に直面・挑戦するという局面も有していると言われているが,この新しい挑戦は自己のアイデンティティー,人間関係,生きるための目的を根本的に評価し直すことでもある3)。このため,精神症状の改善した患者に対しては支持的精神療法的接近が必要とされる4)。牧らの症例や筆者らの症例は目覚め現象に類似しており,塩酸ドネペジルにより目覚め現象が存在すること,痴呆の患者に対しても支持的精神療法的接近の必要であること,それが介護負担を軽減することを考察した。
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