icon fsr

文献詳細

雑誌文献

精神医学44巻3号

2002年03月発行

文献概要

巻頭言

神経可塑性と精神医学

著者: 千葉茂1

所属機関: 1旭川医科大学医学部精神医学講座

ページ範囲:P.236 - P.237

文献購入ページに移動
 今から21年前,「燃え上がり現象—てんかんと精神病への新しいアプローチ」1)というタイトルの本が出版された。当時,大学院に在籍していた私は燃え上がり現象(kindling effect,以下キンドリング)を用いた実験を行っていたので,この本は忘れがたく大切な本である。この本を通して,神経可塑性の観点からてんかん発作や精神現象を見ていくことの重要性を学ばせていただいた。
 脳は,分子(1Å),細胞下構造(例えばシナプス)(1μm),神経細胞(100μm),神経回路(1mm),領野(マップ)(1cm),領野複合体としてのシステム(10cm),および脳全体(1m)という7つの複数の階層からなっている。ひとりの人間における脳機能を論じる場合には,各々の階層で生ずる1つ1つの現象の間の関連性を探っていくことが重要であろう。例えば,動物における1つの遺伝子操作が,海馬のシナプスレベルで生ずるlong-term potentiationというシナプス可塑性と,空間記憶能力という領野複合体システムで生ずる神経可塑性に対して,どのような影響を及ぼすかについてはすでに報告があるが,近年このような実験研究の知見を積み重ねていくことによって,分子・シナプスと領野複合体システムとの間の理解は急速に深まってきた。また,この延長線上に,動物の,あるいはヒトの脳全体の理解,すなわちニューロンから出来ている複雑系としての脳全体の理解があると思われる。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?