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特集 新しい向精神薬の薬理・治療 幻聴症状の改善症例
Perospirone投与により幻聴に基づく異食行動が消失した精神分裂病の1症例
著者: 原田研一1 山本健治1
所属機関: 1名寄市立総合病院神経精神科
ページ範囲:P.253 - P.255
文献購入ページに移動Haloperidolをはじめとする従来型抗精神病薬は,主にドーパミンD2受容体遮断作用を介して,精神分裂病の陽性症状に対する強力な治療効果を示す。その反面,陰性症状に対する効果は不十分であり,さらに錐体外路系副作川やプロラクチン上昇を惹起しやすいなど,いくつかの問題点を有していた。その後,これらの問題点を克服しうる薬物として非定型抗精神病薬clozapineが登場した。しかし,顆粒球減少という致死的副作用のため一定条件下でのみの投与に限られており,本邦では現在開発治験段階にある。
しかしながら近年,clozapineの薬理学的プロフィールに近似しつつ致死的副作用を示さない新たな非定型抗精神病薬が相次いで開発された。本邦においてもrisperidoneが使用可能となったのを端緒に,perospirone,quetiapine,olanzapineといった非定型抗精神病薬が順次,上市された。その中でも,特にperospironeは国産初のセロトニン・ドーパミン・アンタゴニスト(SDA)系抗精神病薬として注目されている。治験段階では,陽性症状のみならず陰性症状の改善効果および錐体外路症状をはじめとする副作用発現率の低さが確認されている2〜4)。
今回,従来型抗精神病薬の投与中に生じた幻聴に基づく異食行動が,perospirone投与後,速やかに消失した精神分裂病の1症例を経験したので報告する。
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