文献詳細
特別寄稿
NIH/NIMH(米国国立衛生機関)にリードされるアメリカの精神医学研究の実態(第1回)—NIHの基本理念と,それに基づく研究体制,グラント評価のあり方について
著者: 澤明1
所属機関: 1ジョンズホプキンス大学精神医学部門,神経科学部門
ページ範囲:P.341 - P.348
文献概要
私は,1990年(平成2年)に医学部を卒業し,基本的な臨床,研究のトレーニングを受けた後,1996年(平成8年)に,当時の東京大学精神医学教室教授松下正明先生のご指導のもと,米国に留学することとなった。こうした,卒後7年目という日本での経験が少ない時点での留学に対し,私自身時期尚早ではないかという危惧もなかったわけではなかったが,逆に白紙に近い状態だからこそ新しい地で吸収できるものもあるのではないか,という期待も持って米国にやってきた。
日本からの留学の場合にしばしば直面する問題として,たとえ精神科医(臨床医)であっても「リサーチフェロー(ポストドクトラルフェロー)」という研究を行う立場でアメリカの施設に所属することとなるため,どうしても臨床の本当の実態に触れて,その研究と臨床を支える本質的な仕組みや考え方を学ぶことは難しいことがある。私自身も留学当初の立場はこのポストドクトラルフェローであったが,この立場の限界を越えて何かを学びたいと考えていた。そんな折ある縁あって,米国で医学研究を制度上リードする立場にある,米国国立衛生機関(National Institute of Health:NIH)の中で精神医学部門を担当するNational Institute of Mental Health(NIMH)の副所長であるリチャード中村と出会った。彼に私の考えを述べたところ,彼は快く,NIMHでのインタビューを通してアメリカの研究の考え方,機構を学ぶことを許してくださった。今回3回にわたって,そのインタビューを通して得られた私の経験をご紹介したいと思う。
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