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文献詳細

雑誌文献

精神医学44巻4号

2002年04月発行

展望

Asperger症候群と高機能広汎性発達障害

著者: 杉山登志郎1

所属機関: 1あいち小児保健医療総合センター

ページ範囲:P.368 - P.379

文献概要

高機能問題とは
 最近の調査では,Asperger症候群および高機能広汎性発達障害(定義などは後述)は,従来考えられていたよりもずっと多いことが示されるようになった。広汎性発達障害自体が1%前後の罹病率を有し58,67),その約半数が高機能群である19)。つまりこの群は0.5%前後の罹病率を有すると考えられ,少し大きな学校であれば1学年に1名程度は存在することになる。今日,学校教育においてこのグループの児童への対応は大きな問題となってきている54)。広汎性発達障害の中の高機能群は通常学級で集団教育を受けることが多いが,非社会的なトラブルを頻発させ,まれではあるが学級崩壊の元凶となっている場合もある53)。ところが学校カウンセラーとして働く臨床心理士にしても,発達障害や特に自閉症に対する専門的知識を持つものは非常に限られており,臨床的経験も乏しいことが多い。小児科医にしても,このグループの児童の経験は乏しく,その結果,正しい診断が下されず学習障害,非言語性学習障害,注意欠陥多動性障害といった誤診の例は非常に多い。しかしながらこれらの診断はまだしも発達障害の範疇である。親子関係の障害,さらには躾の問題といった誤解もいまだに多く,さらに不登校を来したAsperger症候群の児童に対して,登校刺激を加えずに様子をみるといった完全に誤った対応がなされていた例が日にとまる。またごく少数ではあるが,殺人など重大な触法行為に至る症例も報告されている22)
 より重要なことは,これら高機能群の成人によって回想や自伝が著されたことによって,長年の謎であった自閉症の体験世界がようやく明らかになってきたことである。彼らは自閉症という特異な世界を垣間みるための優れた窓である。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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