文献詳細
研究と報告
難治性強迫性障害の1症例にみる現実欲求挫折の特徴
著者: 田代信維1 加藤奈子1 野見山晃1
所属機関: 1九州大学大学院医学研究院精神病態医学
ページ範囲:P.409 - P.415
文献概要
その結果,自我尊厳欲求(他人からの評価)で傷ついたとき,同時に愛情欲求までが脅かされ,感情表出ができずにいた。そのとき出現した強迫症状は,低次の安全欲求の充足に加えて,自我尊厳の傷つきを保障する今1つの自我尊厳欲求(自己を自ら評価し,承認する欲求)に基づくことが示唆された。治療は,症状を問題にしている間はらちが開かず,症状は一進一退であったが,長女との愛憎問題の発生をきっかけに感情表出の手助けを試みたところ,愛情欲求の「わだかまり」が解け,強迫症状が急速に軽快へ向かった。以上の結果から,本症例に潜む治療抵抗性と強迫行為の意味について検討を試みた。
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