研究と報告
日本語版National Adult Reading Test(JART)の作成
著者:
松岡恵子1
金吉晴1
廣尚典2
宮本有紀3
藤田久美子4
田中邦明5
小山恵子6
香月菜々子6
所属機関:
1国立精神・神経センター精神保健研究所成人精神保健部
2日本鋼管鶴見保健センター
3東京大学大学院医学系研究科
4北コロラド大学人文科学部
5東京医科歯科大学
6東京都老人医療センター精神科
ページ範囲:P.503 - P.511
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【抄録】 National Adult Reading Test(NART)は不規則な音読を持つ50英単語の音読課題である。その音読が痴呆患者では保持され,健常者ではIQと相関することから,痴呆患者の病前IQを推定できる。筆者らは漢字100熟語音読課題を用いて日本語版NART(Japanese Adult Reading Test:JART)を作成し,その信頼性・妥当性を予備的に検討した。健常者140名にJARTとWechsler Adult lntelligence Scale-Revisedを施行した。JART全項目のα係数は0.94であった。またJART正答数とIQとは強い相関(r=0.72)を示したことからJART誤答数よりIQを推定する回帰式を作成した。軽度脳血管性痴呆患者13名,軽度アルツハイマー型痴呆患者29名に対してJARTとWAIS-Rを行ったところ,JARTによる推定IQはほぼすべての患者で実際のIQを上回っていた。これよりJARTの信頼性・妥当性が予備的に支持された。