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短報
Clonazepamが奏効したけいれん性発声障害の1症例
著者: 宮岡剛1 笠原恭輔1 三浦星治1 大城隆太郎1 岡崎四方1 山崎繁1 三原卓巳1 清水予旨子1 安川玲1 坪内健1 水野創一1 前田孝弘1 上垣淳1 助川鶴平12 稲垣卓司1 堀口淳1
所属機関: 1島根医科大学医学部精神医学講座 2国立療養所鳥取病院精神科
ページ範囲:P.543 - P.545
文献購入ページに移動けいれん性発声障害(spasmodic dysphonia,以下SDと略す)は稀な疾患である7)。発声時に声帯の過緊張と声門の過剰閉鎖を起こし,声は圧迫性,努力性となり,不随意に渋滞してとぎれとぎれの声になる。一般に知的レベルの高いものに多く,過緊張やストレスのある時のほうが声が不良である。SDの病因は不明であり,心因から神経生理学的な障害までさまざまな仮説が立てられているが,治療は困難である。主に近年では耳鼻科領域で扱われている疾患であるが,欧米ではSDの治療には精神科的関与が必要であると考えられている9)。しかし,我々の知るかぎりにおいて,本邦の精神科領域における報告は皆無である。clonazepamはbenzodiazepine系の抗てんかん薬であるが,強迫性障害,気分障害,恐慌性障害などの精神障害の治療にも使用されている。しかし,これまでにSDの治療にclonazepamが使用され有効であったという報告はみられない。
今回,SDの1症例にclonazepamによる治療を試みたところ,著明に症状の改善がみられたのでこの症例について報告し,若干の考察を加える。
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