文献詳細
資料
1精神科診療所における20年間にわたる自殺症例の検討
著者: 青山慎介1 白川治1 保坂卓昭1 小野久江1 前田潔1 生村吾郎2
所属機関: 1神戸大学大学院医学系研究科精神神経科 2いくむら医院
ページ範囲:P.685 - P.691
文献概要
自殺は精神科診療上,避けて通ることのできない重要な問題の1つである。わが国における自殺による死亡者総数は,1998年に初めて3万人を超え,人口10万あたりの自殺死亡率は26.0と世界的に見ても高値を示した。続く1999年は,さらに増加し,自殺は深刻な社会問題となっている。特に中高年男性の死因として自殺は常に上位にあり,自殺予防への社会的な要請は高い。
警察庁の発表した「平成10年中における自殺の概要資料」11)によれば,全自殺者のうち,その原因が精神障害であるとされるものは全体の16%にすぎないが,専門家による心理学的剖検に基づいたいくつかの調査2,5,8,14)ではいずれも,自殺者の90%以上が,生前なんらかの精神疾患に罹患していたと診断することが可能であったと報告されている。これは,精神疾患に罹患しながらも医療機関を受診せず,自殺に至った例が数多く含まれていることを示唆している。以上のように自殺予防に精神医療の果たすべき役割は,極めて大きいと言えるであろう。
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