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短報
塩酸トラゾドン長期投与中に横紋筋融解症を来した1症例—髄液モノアミン所見と薬物代謝能の検討
著者: 岸田郁子1 河西千秋1 小田原俊成1 成田博之1 小阪憲司1
所属機関: 1横浜市立大学医学部精神医学
ページ範囲:P.1013 - P.1015
文献購入ページに移動向精神薬の投与中に,悪性症候群やセロトニン症候群,横紋筋融解症といった重篤な副作用が出現することがある。これらの副作用は,それぞれ臨床的にオーバーラップしているが,その発症機序や病態はいまだに十分解明されていない。悪性症候群,セロトニン症候群は共に,モノアミンを中心とした脳内神経伝達系のインバランスがその本態であると考えられており,中枢神経系のモノアミン動態に興味が持たれている。今回,我々は,塩酸トラゾドンの長期投与中,上気道感染を契機に意識障害と横紋筋融解症を来した症例を経験した。同症例において髄液モノアミンとその代謝産物を測定したところ,ドパミン代謝物であるhomovanillic acid(HVA),セロトニン代謝物である5-hydroxyindoleacetic acid(5-HIAA)が病相期,回復期ともに低値を示した。また,同症例において塩酸トラゾドンとその活性代謝産物の代謝にかかわるチトクロームP 450 IID 6遺伝子のタイピングを行ったところ,*10アレルのホモ接合体であることが同定されたので考察を加えて報告する。
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