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研究と報告
痴呆症に対する音楽療法の効果についての検討
著者: 渡辺恭子1 酉川志保2 繁信和恵3 塩田一雄2 松井博2 池田学3
所属機関: 1名古屋大学大学院教育発達科学研究科 2財団新居浜病院 3愛媛大学医学部神経精神医学教室
ページ範囲:P.49 - P.54
文献購入ページに移動本研究ではアルツハイマー病患者と脳血管性痴呆患者を対象として,音楽療法を週1回,2か月間実施し,D-EMSを用いて評価し,対象者の変化を縦断的に検討した。この方法により,日常的なリハビリテーション場面に即した,継続した活動実施による音楽療法中の状態変化に関する検討を行った。
その結果,なじみの関係や音楽療法活動の定着により,発言数の増加や社会性の向上といった変化が認められ,その向上は実施期間に比例する可能性が推察された。また,歌唱活動が最も導入が容易で,音楽療法のアプローチ方法の工夫により一定水準までの指示理解の改善は期待できると考えられた。一方,楽器を用いた活動には定着までに若干の期間を要すると考えられた。加えて,ある程度身体運動を惹起することは可能であるが定着には至らないと考察された。他の活動と比べて情動の安定という効果は期待できるが,活動を継続しても情動はほとんど変化しないと思われた。さらに,集中力の改善や参加意欲の向上は困難で,集中や参加を促すスタッフの援助などの工夫が必要であると考えられた。
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