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雑誌詳細

文献概要

私のカルテから

薬物治療中に清涼飲料水の多飲から著しい高血糖を来した統合失調症の1例

著者: 河合伸念1 堀孝文2 朝田隆2 鈴木浩明3

所属機関: 1水海道厚生病院 2筑波大学臨床医学系(精神医学) 3筑波大学臨床医学系(内科)

ページ範囲:P.87 - P.89

 近年本邦でもリスペリドン,オランザピンなど「非定型」と呼ばれる抗精神病薬が相次いで発売されている。ところが最近オランザピン投与中に糖尿病性ケトアシドーシスを発症した症例などが公表され,転換期を迎えたわが国の統合失調症薬物治療に波紋を投げかけた。このような折筆者らは,リスペリドンを中心とした薬物治療中に清涼飲料水の多飲から著しい高血糖を来した統合失調症の症例を経験したので報告する。

症例

 男性。27歳。

 既往歴・家族歴 父方の祖母の同胞に糖尿病の者がいる。

 現病歴 高校を卒業後就職したが,身体の不調などを訴えて1年半ほどで辞め,その後は自宅に引きこもりがちとなった。1999年8月(24歳),頭痛,倦怠感などを訴えてT病院(内科)を受診したが,種々の検査では特に異常を認めなかった(随時血糖124mg/dl,表参照)。同年10月頃から独語が目立ち始め,「悪口が聞こえる。誰かに見張られている」などと訴えるようになり,2000年4月1日,当院を初診した。

 初診時,本人は極めて拒否的で,身体所見の診察や採血を拒んだ。病歴から幻聴,被害・関係妄想の存在が明らかであったため統合失調症と診断し,リスペリドン3mg,ビペリデン2mg,ベゲタミンB1錠,ニトラゼパム5mg(/日)を開始した。しばらくの間本人は通院を嫌がり家族のみが来院したが,服薬コンプライアンスは良好だった。その後次第に幻聴や妄想を訴えなくなり,外来にも姿を見せるようになったが,無為・自閉の状態は慢性的に持続した。

掲載雑誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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