文献詳細
巻頭言
文献概要
わが国における医師-患者関係には伝統的に権威主義的関係(パターナリズム)が是認されてきたとされている。しかし,近年,欧米を中心に「患者の権利」運動が展開されて本邦の医療現場においても医師-患者関係を取り巻く医療環境は急速に変貌を遂げつつある。「患者には基本的人権がある」という認識と,「医師-患者関係は権威主義的関係(パターナリズム)から対等な関係(パートナーシップ)となるべきである」という主張に依拠して「患者権利運動」は展開された。米国における運動は,「患者の権利章典」として法的にも結実し,以降,医療のありかたについて世界的に多大な影響を及ぼすようになった。この指導原理から「自己決定」,「自己責任」によって医療が行われるべきであるという結論が導きだされる。そして,医療現場において「病名の告知」を含めて診療録などの「医療情報開示」が要請され,実際に医療現場ではインフォームドコンセント(説明と同意)が押し進められるようになってきた。ことさらpatient-orientedというまでもなく,至極当然のことと考えられる。
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