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文献詳細

雑誌文献

精神医学45巻10号

2003年10月発行

文献概要

特集 新医師臨床研修制度における精神科研修はどうあるべきか

聞き上手,語らせ上手の医師づくり―岡山大学卒後臨床研修案を中心に

著者: 黒田重利1

所属機関: 1岡山大学大学院医歯学総合研究科精神神経病態学教室

ページ範囲:P.1053 - P.1056

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精神科医としての素養

 望ましい医師は“頭脳,こころ(ハート),腕”の3要素を有している。しかもすべて豊かに有している。望ましい精神科医も同様であり,科学(science)としての精神医学,精神医療に関して十分で,偏りのない知識,技術を持たねばならない。また現在流にいえば,エビデンスに基づいた医療を行う。と同時に,精神科ではこれと等しくあるいはそれ以上に人格,人間性が求められる。「あの先生に会うと,ほっとする,気持ちがほぐれる」などの暖かい受容的,包容力のある態度を持たねばならない。

 精神科七者懇談会の研修プログラム案には精神科医として持つべき能力,要素として,①感性の錬磨,②コミュニケーション能力の獲得,③筋の通った医療を行う,の三つをあげている。①と②はいわゆる聞き上手としてまとめられる。確かに精神科医の中には,生まれながらに豊かな感性を持っている人がいるが,すべての人が持っているわけではない。症状,訴えを汲み,感じとる感性は精神科医として不可欠であり,それを得るように錬磨する。コミュニケーションは言語および非言語を通してのこころの交流,やりとりである。聞き上手は話の聞き役ばかりでなく,語らせ上手でもある。患者が症状,苦悩,つらさを語るときその話の腰を折らず,目を見つめ,うなずき,相槌を入れながらずっと聞く,耳を傾ける。話の内容によっては時間がかかり,聞くことが大変で忍耐力が求められる。相手への積極的関心を持つことも聞き上手の要素の一つである。あらかじめいろいろの質問項目を用意する。日頃から読書,既知・未知の人との付き合い,旅に出かけるなどによって知識,教養,情報を得ておく。また研修者の人生・生活での失敗,苦労などは精神科医として重要な素材である。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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