文献詳細
特集 統合失調症と認知機能―最近の話題
健常者と統合失調症者のP300に対するペロスピロンの作用
著者: 森田喜一郎1 早稲田芳史2 小路純央2 山本寛子2 西浦佐知子2 森圭一郎2 前田久雄12
所属機関: 1久留米大学高次脳疾患研究所 2久留米大学医学部神経精神科学教室
ページ範囲:P.1297 - P.1303
文献概要
ペロスピロン(商品名:ルーラン)は,わが国で開発された抗D2作用や抗HT2作用を有する非定型抗精神病薬のひとつである3,8)。ペロスピロンをはじめとする非定型抗精神病薬は,統合失調症者の幻覚などの陽性症状のみならず,意欲低下・引きこもり・感情の平板化などの陰性症状にも有効とされている3,8)。統合失調症の基本障害として認知機能障害が提唱されており,ペロスピロンも認知機能の改善薬と報告されているが,認知機能に対するペロスピロンの作用機序は不明な点が多い。
事象関連電位(Event-related potentials:ERPs)のP300成分は,認知機能を反映する精神生理学的指標として多くの研究がなされてきた1,9)。統合失調症者では,P300振幅の減少が特徴的指標とされている1,10)。さらに,我々の研究などから,表情画や表情写真を標的刺激とする視覚誘発P300が,表情の種類によって影響を受けることもわかっている11,12)。 今回,我々は,健常者および統合失調症者において事象関連電位のP300成分に対するペロスピロンの作用を検討した。さらに,表情の影響6)を検討するため自然で刺激の少ない乳児の「泣き」および「笑い」の表情写真を用いてP300成分に対する表情負荷の影響を検討した。
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