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研究と報告
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抄録
意識障害を伴わない軽い頭部打撲後,持続する重篤な前向性健忘を呈した若年男性例を報告した。神経心理学的検査では,知能レベルが高く,平均以上の短期記憶能力を示したにもかかわらず,重篤な前向性健忘を呈していた。逆向性記憶は正常で,著しい対照を成していた。神経学所見やMRI,SPECTなどの神経放射線学的検査からは脳器質性障害を見いだせず,その病歴や二次性疾病利得などの観点からも,心因性病因を支持する結果は得られなかった。記憶過程における符号化encoding閾値が頭部打撲によって異常に高められた可能性があり,De Renziらに従って「機能性健忘」――心因性健忘と等価ではなく,病因が器質性,心因性のいずれにも該当せず,病変が機能に影響を及ぼすという意味で――と呼び,類似した症例の蓄積を促したいと思う。
意識障害を伴わない軽い頭部打撲後,持続する重篤な前向性健忘を呈した若年男性例を報告した。神経心理学的検査では,知能レベルが高く,平均以上の短期記憶能力を示したにもかかわらず,重篤な前向性健忘を呈していた。逆向性記憶は正常で,著しい対照を成していた。神経学所見やMRI,SPECTなどの神経放射線学的検査からは脳器質性障害を見いだせず,その病歴や二次性疾病利得などの観点からも,心因性病因を支持する結果は得られなかった。記憶過程における符号化encoding閾値が頭部打撲によって異常に高められた可能性があり,De Renziらに従って「機能性健忘」――心因性健忘と等価ではなく,病因が器質性,心因性のいずれにも該当せず,病変が機能に影響を及ぼすという意味で――と呼び,類似した症例の蓄積を促したいと思う。
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