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文献詳細

雑誌文献

精神医学45巻2号

2003年02月発行

研究と報告

機能性健忘―純粋前向性健忘の1例

著者: 北條敬1 加川真弓1 中野英樹1

所属機関: 1青森労災病院神経科

ページ範囲:P.129 - P.137

文献概要

抄録

 意識障害を伴わない軽い頭部打撲後,持続する重篤な前向性健忘を呈した若年男性例を報告した。神経心理学的検査では,知能レベルが高く,平均以上の短期記憶能力を示したにもかかわらず,重篤な前向性健忘を呈していた。逆向性記憶は正常で,著しい対照を成していた。神経学所見やMRI,SPECTなどの神経放射線学的検査からは脳器質性障害を見いだせず,その病歴や二次性疾病利得などの観点からも,心因性病因を支持する結果は得られなかった。記憶過程における符号化encoding閾値が頭部打撲によって異常に高められた可能性があり,De Renziらに従って「機能性健忘」――心因性健忘と等価ではなく,病因が器質性,心因性のいずれにも該当せず,病変が機能に影響を及ぼすという意味で――と呼び,類似した症例の蓄積を促したいと思う。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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