文献詳細
特集 ひきこもりの病理と診断・治療
―ひきこもり状態を示す精神障害―「ひきこもり」と不全型神経症―特に対人恐怖症・強迫神経症を中心に
著者: 鍋田恭孝1
所属機関: 1大正大学人間学部
ページ範囲:P.247 - P.253
文献概要
近年,神経症の臨床から見ると,対人恐怖症,強迫神経症を中心として,症候学的には軽症の神経症が増加しているという印象があり,一方,ひきこもる青年の臨床においては,人格障害・発達障害傾向とともに,さまざまな神経症類似症状が見いだされるという印象を抱いている(表参照)。この軽症の神経症,および,ひきこもりに伴う神経症類似症状と,症状が明確に形成されている神経症(古典的といえばよいか)とはどのような関係にあるか,という点を検討するのが本論の主題である。
結論的にいえば,ひきこもる青年には,ある程度一定の共通した心性がみられ,その心性のいくつかの点は神経症の心性と関連性があり,必然的に神経症傾向を伴うことになると考えている。特に対人恐怖心性や強迫心性や外出恐怖心性との関連が深く,それらの神経症症状を伴いやすい。また,このひきこもり心性だけがみられ,他の神経症類似症状のない症例は「ひきこもり」となるし,ひきこもり心性の少ない神経症は古典的な神経症に限りなく近づくと考えている。しかし,古典的な神経症においてみられる自分の弱点を何とかしようとする強力な側面や,それに伴う葛藤のメカニズムがひきこもりに伴う神経症類似状態には見いだしにくく,本質的に異なる側面があるとも考えている。(参考のために不登校・ひきこもり・神経症・人格障害の関係について図に示す。)
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