文献詳細
展望
文献概要
文化精神医学はそもそも精神医学の中では周辺的な分野であった。日本においては主に1960から1980年代にかけて,精神病理学の研究者たちによって優れた業績が発表されてきたが,全体としては限られた精神科医の興味を引くにとどまっていたように思われる。しかし,グローバライゼーションの大きな流れとともに状況は大きく変わりつつある。世界的に人的交流が大規模に進む中で,異文化間の交流が引き起こす問題とその可能性が注目を集めてきており,その文脈の中で文化精神医学もまたクローズアップされつつある37)。日本においても1993年に多文化間精神医学会が設立されて以来,この方面の成長ぶりは著しいものがある。
本稿では特に英語圏を中心に文化精神医学一般での現在の動きについて紹介したい。英語圏の中でも,主にアメリカ,カナダ,イギリスなどで現在行われている研究活動をここでは念頭に置いている。この地域を選択したのは,筆者が文化精神医学を勉強したのが,CanadaのMcGill Universityであったという個人的な事情にもよるが,ここでの最近の動きが非常に興味深いためでもある。なお文化精神医学,特にそれと医療人類学との関係に関しては,すでに江口10)による包括的な総説があり,本稿とはまた若干違った切り口から紹介を行っている。
本稿では特に英語圏を中心に文化精神医学一般での現在の動きについて紹介したい。英語圏の中でも,主にアメリカ,カナダ,イギリスなどで現在行われている研究活動をここでは念頭に置いている。この地域を選択したのは,筆者が文化精神医学を勉強したのが,CanadaのMcGill Universityであったという個人的な事情にもよるが,ここでの最近の動きが非常に興味深いためでもある。なお文化精神医学,特にそれと医療人類学との関係に関しては,すでに江口10)による包括的な総説があり,本稿とはまた若干違った切り口から紹介を行っている。
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