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研究と報告
けいれん発作と頭痛で発症し,精神病症状を呈した慢性肥厚性硬膜炎の1剖検例
著者: 内門大丈1 土谷邦秋2 井関栄三1 都甲崇1 勝瀬大海1 荻野美恵子3 石井毅4 池田研二5 小阪憲司1
所属機関: 1横浜市立大学医学部精神医学教室 2都立松沢病院検査科 3北里大学医学部附属東病院神経内科 4相模台病院 5東京都精神医学総合研究所老年期精神疾患研究部門
ページ範囲:P.491 - P.499
文献購入ページに移動慢性肥厚性硬膜炎(chronic hypertrophic pachymeningitis;CHP)は,硬膜が慢性に肥厚し,多彩な脳神経障害,頭痛,歩行障害などを呈する疾患である。今回我々は,26歳時にけいれん発作で初発し,28歳時より頭痛を伴い,44歳時に精神病症状から統合失調症と診断され,66歳の死亡まで約40年の長期にわたる罹病期間を持つCHPの1剖検例を経験した。本症例は臨床的には,末梢性多発性神経症候は認められず,頭痛,けいれん発作,精神病症状が主であった。また,剖検所見としては,肥厚した硬膜に加え,脳実質には,左側頭葉の皮質に粗鬆・軟化巣を認め,皮質下白質にはミエリンの脱落を伴う変性を認めた。
本症例のように,CHPの経過中に精神病症状を呈した報告は少なく,CHPが器質性精神病を示した可能性と剖検脳で見いだされた側頭葉病変が精神病症状の原因となった可能性を指摘した。
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