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研究と報告
一過性に特異な幻視を呈した1高齢男性例
著者: 伊藤侯輝1 谷川知子1 森清1 三枝英之1 千秋勉1 池田輝明1
所属機関: 1市立小樽第二病院
ページ範囲:P.501 - P.507
文献購入ページに移動近年,痴呆のない高齢者において色彩に富んだリアルな複合幻視が出現し,その非現実性に明白な病識を有するCharles Bonnet syndrome(以下CBS)が注目されている。今回我々は,一過性にCBS様の幻視症状を呈した1男性例を経験し,その臨床的特徴について検討を加えた。本症例は,幻視症状の出現とその進展・回復過程に際しての特徴(左視野にほぼ限局して出現,要素性から複合幻視へと進展後,要素性幻視を経て消失),脳波,SPECTで認められた幻視症状に対応する特有な所見(明瞭な左右差とその推移),および積極的な治療を試みないうちに(抗てんかん薬は使用せず,脳循環改善薬を使用)治癒した経過などから,症候性に発した後頭葉てんかんの1例と思われた。また,本症例の後頭葉てんかんとの関連,CBSとの異同,および幻視の発現機序について考察した。
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