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短報
全身麻酔後に口周囲の遅発性ジスキネジアが著明に減弱した1例
著者: 稲見康司12 山田則夫3 宮岡剛2 堀口淳2
所属機関: 1愛媛労災病院精神科 2島根医科大学精神医学講座 3愛媛労災病院神経内科
ページ範囲:P.547 - P.549
文献購入ページに移動遅発性ジスキネジア(tardive dyskinesia;TD)は,抗精神病薬の長期投与中に出現する難治性の不随意運動であり,抗精神病薬の投与を開始して数か月から1年以上経過した後に出現することが多い。またTDは,抗精神病薬によって誘発される一般の錐体外路症状とは異なり,抗コリン薬は無効であったり,むしろ症状を増悪させることも知られており,適当な治療法が存在しないことから,その出現を予防することが重要であり,非定型抗精神病薬は従来の抗精神病薬と比較して,TDの出現率が低い点でより優位であると考えられている7)。しかし,非定型抗精神病薬にもTDの出現は皆無ではなく,いずれの薬物についてもTDが出現することが知られている3)。
今回報告する症例では,身体合併症の整形外科的治療を行う目的で全身麻酔をかけられた後に,長年にわたる抗精神病薬投与によって口周囲の不随意運動という形で出現していたTDが著明に減少した。最近では,無けいれん電気ショック療法の適応に難治性のTDも含まれるようになってきているが12),全身麻酔がTDの治療に有効である可能性を否定することのできない1例であると考えている。
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